7月 16 2024 /

電子帳簿保存法改正:会計事務所・税理士への影響は?

電子帳簿保存法改正:会計事務所・税理士への影響は?
Written by タックスドーム・ ジャパン
3 分

令和3年度の税制改正において「電子帳簿保存法」が大幅に改正され、令和4年1月1日から「改正電子帳簿保存法」が施行されました。これにより、多くの中小企業がこれまで利用が限られていた制度をより利用しやすくなった一方で、全ての事業者に対して電子取引に関する要件が一部強化されます。そこで本記事では、この改正が税理士に与える影響と顧問先への対応方法などについて説明していきます。

電子帳簿保存法とは

「電子帳簿保存法」は税務関係の帳簿や書類のデータ保存を可能にし、経理のデジタル化を推進することを目的とした法律です。

そもそも法人は、会計取引を記録して確定申告を行った後7年間は、税務関係帳簿書類を保管することが義務付けられます。ここでいう税務関係帳簿書類とは、国税関係帳簿と国税関係書類を指し、例えば以下のような文書が含まれます。

国税関係帳簿

  • 総勘定元帳
  • 現金出納帳
  • 売掛金元帳
  • 買掛金元帳
  • 売上帳
  • 仕入帳 など

国税関係書類

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 契約書
  • 領収書 など

以前は、これらの文書を紙で7年間保存することが義務付けられていましたが、電子帳簿保存法の施行により、これらをデータ形式で保存することが認められるようになりました。

電子帳簿保存法の大きなポイントとなるのは次の3つの保存方法です。

  1. 電子帳簿等保存:会計ソフトなどで作成した帳簿や決算書類などをそのままの電子データで保存することです。
  2. スキャナ保存:紙で受領または作成した書類をスキャンして、画像データとして保存することです。
  3. 電子取引データ保存:電子的に授受した取引情報をデータ形式で保存することで、例えば領収書や請求書などを紙ではなくデータとして取引する場合に該当します。

「ネット通販ならば必ずデータ保存が必要」というわけではなく、紙ではなくデータとして受け取った領収書などに限りますので、誤解しないように注意してください。

以前は電子的に授受した取引情報を紙で保存しても問題ありませんでしたが、今後はオリジナルの電子データ形式で保存する必要があります。

電子帳簿保存法に非対応の場合の罰則

罰則として、1つ目に青色申告の承認が取り消されることが挙げられます。青色申告は、最大65万円の特別控除など多くの税制上の特典が受けられる制度です。

この承認が取り消されると、特典を受けられなくなるだけでなく、欠損金の繰越もできなくなります。さらに、青色申告の承認取り消しは、企業の信用を大きく損なうかもしれません。

2つ目に、推計課税や追徴課税が課せられることが考えられます。

国税関係帳簿に不備が多い場合、税務署による「推計課税」が行われる可能性があります。これは、税務署が所得税や法人税を推定して課税するもので、通常よりも高額の税金を支払わなければならないリスクがあるのです。

また、電子データの改ざんや隠ぺいが発覚した場合、通常の追徴課税35%にさらに10%加えて納めなければなりません。

さらに会社法による過料が科せられるケースもあります。電子帳簿保存法に違反した場合、会社法にも違反している可能性があるのです。会社法第976条では、帳簿や書類の適正な記録・保存が義務付けられており、これを怠った場合、最大100万円の過料が科せられることがあります。

電子帳簿保存法に対応しないと、さまざまな罰則が課されるリスクがあります。適切に電子データを保存し、法令を遵守することが重要です。

税理士が押さえるべき電子帳簿保存法改正のポイント

電子帳簿保存法の改正について税理士が知っておくべきポイントはどのようなところなのでしょうか。この章で具体的に説明します。

事前承認制度の廃止

これまで、国税関係帳簿を電子データとして保存する際には、事前に税務署長の承認が必要でした。しかし事業者の負担を軽減するために、事前承認が不要となったのです。国税関係書類を電子データで保存する場合も同様です。

電子取引の電子データ保存の義務化

改正電子帳簿保存法の特に重要な点の一つは、電子取引における電子データ保存の義務化です。

2022年1月から、「電子取引でやりとりした書類はデータとして保存しなければならない」という制度が導入されました。これにより、電子メールやオンラインで受け取った領収書や請求書などを紙で保存することが禁止されたのです。

例えば、メールで送られてくる請求書のPDFファイル、クレジットカードや交通系ICカードの利用明細のインターネットダウンロード、インターネットショッピングでの備品購入なども電子取引に該当します。

これらの電子取引に伴い発行された書類は、一定の要件を満たす電子データとして保存しなければなりません。

罰則規定の強化

先述した通り、電子取引における電子データ保存やスキャナ保存に関して、隠蔽や改ざんがあった場合の罰則が強化されました。これにより、申告漏れなどが生じた場合には重加算税が10%加重されます。正確な遵守と申告が求められます。

検索要件の緩和

検索要件とは、保存された帳簿書類の電子データを迅速に取り出せるようにするための仕組みのことを指します。改正前は、以下の全ての検索要件を満たす必要がありました。

・取引年月日、勘定科目、取引金額のほか、その帳簿の種類に応じた主要な記録項目で検索できる

・日付や金額の範囲指定で検索できる

・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できる

改正後の検索要件は以下のように緩和されています。

・「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる

・日付や金額の範囲指定で検索できる

・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できる

※税務職員による「ダウンロードの求め」に応じている場合は、検索要件の下2つの機能は不要

この改正により、検索機能に必要な記録項目は「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3点に絞られました。また、「ダウンロードの求め」に応じられる場合の要件が緩和されたことも大きな変更点です。

スキャナ保存のタイムスタンプ要件緩和

紙の書類をスキャンして保存する場合、以前は3営業日以内にタイムスタンプを付与する必要がありましたが、改正により最長2カ月と7営業日まで期限が延長され、また改ざん防止のシステムが使用されていればタイムスタンプの付与が不要になりました。

スキャナ保存の確認要件廃止

国税関連の帳簿や書類のスキャン保存に関する要件が廃止され、特に契約書や領収書などの重要書類に限定されるようになりました。

電子帳簿保存法改正が会計業務に与える影響

この章では、改正された電子帳簿保存法が会計業務へ及ぼす影響について解説します。

業務プロセスの変更

電子取引のデータ保存が義務化されたことで、これまでの業務手順に変更が必要となります。保存要件は緩和されましたが、既存の業務フローをそのまま維持するのは難しいでしょう。

業務内容を見直し、電子帳簿保存法に対応する必要がある部分を整理して準備しておくことが重要です。

紙の使用を減らす取り組みの加速

今回の改正により電子データでの保存が容易になった一方で、紙による保存が制限されたことから、今後はペーパーレス化が促進されると予想されます。

紙ベースの保存にはスペースが必要であり、書類の印刷コストもかさみます。そのため、会計業務の効率化を図りたい企業は、できる限り紙を使用しない方針を採用することになるでしょう。

デジタル化の推進

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、テレワークが急速に普及しています。会計業務は請求書などの処理が中心であり、これまでリモートワークは難しいと考えられていました。

しかしながら、電子帳簿保存法の改正を契機として、今後は会計業務においてもテレワークへの適応やデジタル化が進展すると見込まれます。

顧問先へ電子帳簿保存法改正に関して伝えるためのポイント

顧問先に電子帳簿保存法の改正内容を伝える際には、単に業務連絡として改正点を述べるのではなく、顧問先それぞれにどのような影響があり、具体的にどう対応すればよいかを分かりやすく説明することを心掛けましょう。

法的義務の側面

この改正による影響として、「電子帳簿等保存」や「スキャナ保存」の要件が希望者にのみ影響するのに対し、「電子取引の書面保存廃止」は全事業者に義務付けられます。

近年、郵送コストを削減するために、見積書や注文書、納品書、請求書、領収書などの取引情報をPDFファイルなどのデータで送受信するケースが増えました。また、商品の仕入れや備品の購入においてもインターネットショッピングが増加しています。

多くの事業者で「電子取引」が行われており、令和4年1月1日以降はこれらの取引を紙ではなくデータ形式で保存する義務が課されます。

顧問税理士としては、顧問先の「電子取引」の有無を確認し、存在する場合には電子帳簿保存法の要件を満たす保存方法の提案も行う必要があるでしょう。

対応によって期待できるメリット

電子保存の要件が緩和されたことで、顧問先におけるデジタル化の需要が増すと予想されます。

効果的な電子保存の導入によりペーパーレス化が進み、印刷費や保管スペースの不要化に加えファイリングの手間も省けるため、人件費を含む多岐にわたるコスト削減に寄与します。また、検索要件を満たす電子保存の導入により業務効率が向上し、データ管理の改善が進むことでテレワークの推進にも寄与するでしょう。

顧問先に対しては、電子化への移行を提案する際に、経営環境や課題に応じて電子帳簿保存法の改正内容を適切に説明し、その機会を活用することが重要です。

まとめ

令和4年1月1日から施行された電子帳簿保存法の改正内容には、要件の緩和だけでなく、一部の規制が強化される点も含まれます。

特に規制の強化は、電子保存を希望する事業者だけでなく、電子取引を行う全ての事業者に影響を及ぼすため、各事業者は改正に対して適切な対応が必要です。

顧問税理士としては、今回の改正点を考慮し、顧問先が要件を満たし社内での運用が円滑に行われるよう、スケジュールに余裕を持って適切なサポートを行うことが重要です。

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