近年、少子高齢化に伴う労働力不足という社会的課題がある中で、注目を集めているテクノロジーの一つがRPAです。この言葉はさまざまな場面で耳にすることが増えていますが、「RPAとは何か?」や「RPA導入を実施することで得られるメリット」などについて詳しく理解している方は多くないかもしれません。
そこで今回は、RPAの基本的な概念や業務にRPA導入を実施することによるメリットについて詳しく説明します。この機会にRPAをしっかりと理解し、効果的に活用する方法を考えましょう。
RPAとは?
RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略で、人が手作業で行っていた業務を自動化する技術です。
そして、「RPAツール」を使って業務を自動化することを「RPA化」と言います。
RPA化によって、大量の単純作業や頻繁に発生する決まった作業を自動で処理できるようになり、これまで作業にかかっていた時間を節約できます。その結果、社員はより創造的な業務に集中でき、企業の競争力を高めることができます。
RPA導入のメリット
RPAを活用して業務を自動化することには、主に以下のメリットがあります。これらの利点を理解し、自社の業務改善に役立ててください。
人件費の削減や人員不足の解消
RPAによる業務自動化は、人件費の削減と人員不足の解消に寄与します。RPAはロボットであるため、作業時間に制限がなく、ロジックによっては24時間連続稼働も可能です。また、一度手順をプログラムすればそれに基づいて繰り返し作業を実行し、何度も教えたり確認したりする必要がなくなります。
このため、人件費(人的コストや教育コスト)を削減でき、さらに人手不足の際にはRPAの導入によりその解消が期待できます。
人為的ミスの減少
RPAの自動化によって人為的ミスが減少することも大きな利点です。設定したロジックに従って業務が進むため、ルールを正確に定義しておけばミスのない業務遂行が可能です。
その結果、業務品質は大きく向上します。また、データを用いて処理することで、後からの検索が容易になったり、紙の資料を保管する必要がなくなったりすることで、別の側面からも業務品質が向上します。
業務のスピード向上
RPAを導入すると業務全体が迅速に進むため、後続タスクに余裕が生まれます。RPAツールは、設定や環境によっては営業時間外でも動作し、大量のデータを迅速に処理することが可能です。
例えばデータ入力や経費精算などの定型業務は、業務の初期段階であり、これが遅れると後続の作業に影響を及ぼします。しかし、RPAを活用することで初期業務のスピードが向上し、全体の業務がより早く進むようになります。
その結果、後続タスクに余裕が生まれ、期限に追われることが少なくなり、働きやすい環境を手に入れることが可能になります。
余剰人員のコア業務への配置
RPAを導入して定型業務を自動化することで、得られた人的リソースを売上に直結するコア業務に割り当てることが可能になります。また、人手不足に悩む企業は、RPAの導入によって業務効率が大幅に改善し、人員と業務のバランスが最適な状態に近づきます。
このように、RPAによる自動化は人員不足の解消と人的リソースの最適化を同時に実現し、全社的なサービスの質改善と生産性の向上を通じて、企業の競争力を強化します。
RPA導入によるデメリット
この章ではRPA導入によるデメリットについて解説します。
ロジックの変更に伴う修正が必要
導入時に作成したロジックに変更が必要になった場合や、Webサイトや基幹システムのUI(見た目)が変更された際には、新しい状況に合わせてロジックを修正しなければならないことがあります。
迅速に対応しないと業務が停止するリスクもあるため、これを防ぐためには導入時に運用も考慮し、定期的なメンテナンスで仕様変更の確認を行うことが重要です。また、万が一エラーが発生した場合に迅速にロジックのエラー解析ができるRPAを選ぶことが推奨されます。
業務の属人化やブラックボックス化が進む可能性
RPAを導入した後は、業務の属人化やブラックボックス化に注意が必要です。
ロジックをしっかり構築すれば導入後に対応する作業は少なくて済みますが、担当者が異動する場合などには、確実に業務の引き継ぎを行うことが重要です。
RPAを理解している担当者が1人だけだと、業務が属人化し、トラブルが発生した際に対応方法が分からなくなる可能性があります。
そのため、ツールの導入後も安心せず、どのようなロジックが組まれているかを中心に情報共有できる社内体制を整えておくことが大切です。
定期的なメンテナンスが必要
RPAの導入には、定期的なメンテナンスや作業内容の確認が欠かせません。
RPAは指示されたロジックを忠実に実行するため、仮にロジックに誤りがあっても、エラーが出ない限り作業は止まらず進行してしまいます。指示ミスによる誤ったアウトプットは避けるべきです。
誤った結果が出力されると、ロジックの修正だけでなく、その出力に基づく業務の手直しも必要となり、業務負担が増えてしまいます。
そのため、ロジック作成時には事前に十分なテストを行い、さらに定期的にメンテナンスを実施して業務フローや処理内容が正確かどうかを確認することが重要です。
RPA導入のステップ
この章ではRPA導入の流れを解説します。
1.業務プロセスの再確認
現在の業務について、担当者やプロセスを明確にします。業務全体を見直すことで、属人化やブラックボックス化といった問題点を発見できるはずです。
さらに、この際に業務量や作業時間も計測しておくことで、導入後の成果を正確に評価することが可能になります。
2.RPAに適した業務を選定する
可視化した社内業務の中から、RPAで自動化できる業務を選びます。RPAの導入に適している業務の特徴は以下の通りです。
- 決まった手順に沿って行われる定型業務
- 毎日や毎週など、定期的に発生する作業
- 大量のデータを処理する業務
- 人の手を使わずにパソコン上で完結できる作業
3.導入候補のRPAツールを比較・検討する
RPAで自動化する業務が決まったら、その業務に適したRPAツールを選びましょう。製品を比較する際には機能だけでなく、価格や拡張性、サポート体制、操作性なども考慮することが大切です。
さらに、無料トライアルやデモを利用し、実際に作業を担当する人が画面を事前に確認できるとより良い判断ができるでしょう。
4.RPA導入を部分的に実施して試す
導入時には、可能な限り一部の業務からのスモールスタートを推奨します。なぜなら、効果が見えないまま全社に導入するのはリスクが高く、まず自社に合った運用体制を整えてから広く導入する方が、トラブルが発生した際の業務への影響が少なくて済むからです。
さらに、本格導入に向けてRPAの管理チームを編成し、権限範囲やトラブル発生時の対応方法を事前に決めておくことが重要です。
5.PDCAサイクルを実施してRPA導入を本格化する
最初にRPAを導入した段階でPDCAサイクルを回し、運用ルールの整備や作成フローの確立を進めます。そして、一部の業務で自動化と効果測定が完了した時点で、他の業務や部署へRPAを展開していきます。
RPA導入で失敗を避けるための留意点
この章ではRPA導入において注意すべきポイントを解説します。
RPAを通じて実現したい目標とその効果を評価するための指標を明確に設定しておく
RPAを導入することで得られる利点は様々ですが、その成果を評価する基準も多岐にわたります。
企業ごとにRPAで達成したい目標が異なるため、効果を測る指標もそれぞれ異なります。したがって、導入の際は社内で一貫した目標意識を持ち、スムーズに進めるためにRPA導入の目的とその効果を測るための指標を明確にしておくことが大切です。
まずは小規模な導入から始める
社内の重要な業務をいきなりRPA化すると、影響が大きすぎて導入コストが増えたり、社内で混乱が起こったりする可能性があります。そのため、まずは一つの部署で行っているデータ入力など、影響が限られた小さな業務からRPAを導入し、試行錯誤しながら少しずつ規模を広げていくのが効果的です。
また、RPAを導入する過程で、「AIに仕事を奪われるのでは?」と不安に思う従業員が出てくるかもしれません。そのような状況に対しては、RPAのメリットを丁寧に説明し、AIやRPAに関する理解を深めてもらうことが大切です。
業務効率や生産性の向上に前向きに取り組める環境を整え、従業員のモチベーションを高めることがRPA導入の鍵となります。
人材育成やサポート体制を整える
RPA化するには、業務の流れを細かい手順に分け、それをRPAで実行できる形に落とし込み、必要に応じて条件分岐や例外処理も設定する必要があります。この作業は誰でもすぐにできるわけではありません。
また、導入後もRPAが止まったときのエラー対応や、業務の変更に伴うRPAの修正が必要です。
そのため、RPAの開発や運用を社内で行うには、社内の人材育成が重要です。特に初期段階では、外部の専門家に社員へのトレーニングや、サンプルとなるRPAの開発を依頼し、専門家のサポートを受けながら、社内で継続的に運用できる体制を整えることが大切です。
まとめ
組織の規模や構造によって異なりますが、RPA導入時には多くの課題が生じ、導入が上手くいかない場合も少なくありません。この記事で紹介した注意点を把握し対策を講じれば、RPA導入をよりスムーズかつ効率的に進めることができます。
また、運用後のことを考慮して、サポートが充実しているベンダーやツールを慎重に選ぶことも重要です。
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