日本で事業を運営する企業は税務申告が必要です。もちろん、適正に節税対策を実施したいと考える企業もあるでしょう。税法は頻繁に変更されるため、正確な税法知識に基づく節税に関する知識が必要になります。
税金に関する業務を行う専門家としては税理士が有名ですが、「税務業務」とはどういったものを指すのでしょうか。よく聞く言葉だと思いますが、具体的な内容は知らないという方もいらっしゃることでしょう。そこでこの記事では、税務業務の内容や関連する資格について解説します。
税務業務とは?会計・経理・財務との違いは?
この章では税務業務がどのようなものか説明し、会計・経理・財務との違いについても解説します。
税務業務
一般的に、税務業務という言葉は税理士の独占業務である税務代理・税務書類の作成・税務相談のことを指します。それぞれについて詳しく説明します。
税務書類の作成
「税務書類の作成」とは、税務署などに提出するための書類を代理で作成する業務を指します。税理士が作成できる書類の例として、以下のものがあります。
- 確定申告に関連する書類
- 企業の月次・年次の決算書
- 相続税や贈与税などの申告書
- 所得税徴収高計算書(納付書)
- 法定調書
上記は一部であり、実際の業務では一般的にはあまり馴染みのない税に関連した書類も多く作成されます。
税務代理
「税務代理」とは、依頼者に代わって税務署や行政機関に対して税金に関する手続きを行うサービスです。税金に関する計算や申告は非常に複雑で、多くの方にとっては難しい作業です。そのため、税理士が依頼者の代わりにこれらの手続きを行います。以下は、税務代理が行う主な業務の例です。
- 申告: 確定申告や納税申告などの申告書類を提出します。
- 申請: 青色申告承認申請、納税猶予の申請、減額承認申請などを行います。
- 請求: 更正の請求などの請求手続きを行います。
- 立ち会い: 税務調査の際に依頼者を代表して立ち会います。
- 不服申立て: 行政機関に対する異議申し立てや審査請求などを行います。
税務相談
税理士は、依頼者から様々な相談を受ける役割を果たします。これらの相談事は、税金や税務手続きのみに関するものだけでなく、会計や経営に関するより幅広い相談を含みます。以下は具体的な相談の例です。
- 帳簿の管理方法や確定申告手続きについての相談
- 節税策や年次決算に関するアドバイス
- 経理業務の進め方や適切なツールの使用についての質問
- 融資や資金繰りに関する助言
税理士は、企業の将来の方向性や経営計画に関する相談も受けます。このような場合、税務のみの問題だけでなく、経営コンサルティングに近い対応が必要となることもあります。
非常に重要なことですが、税理士は業務の中で得た秘密情報を漏らすことは許されません。税理士法によって、業務で知りえた情報の機密保持が義務付けられており、侵害すると損害賠償責任や懲戒処分の対象となります。
税理士は依頼者の個人収入や企業の業績など、一般に公に知られていない情報を取り扱うため、常に慎重な姿勢が求められます。
経理について
「税務業務」に関連する業務として「経理」があります。経理を通じて、会社のお金の流れが可視化されます。経理は会社の中核的な部門で、非常に重要な役割を果たしています。
経理の業務は以下の通りです。
- 日々の伝票整理
- 経費の精算
- 給与計算
- 売掛金の回収
- 決算書の作成
- 源泉徴収税の処理
- 保険料の支払い など
これらの業務には幅広い知識と経験が求められ、経理は会社運営において欠かせないポジションです。
会計について
「税務業務」に関連する業務である「会計」とは、簡単に言えば「取引やお金の出し入れを記録すること」で、主に2つの側面があります。
ひとつは「財務会計」で、これは外部の人々に会社の財務状況を開示するための帳簿や伝票の記録などのことです。もうひとつは「管理会計」で、これは自社の経営状況を把握し、内部で効果的な意思決定をするための業務です。
財務会計の仕事だけでなく、管理会計の知識や実務経験を持つ人材は、多くの企業にとって価値が高く、求められています。
財務について
「税務業務」に関連する業務である「財務」の役割は、経理とは異なります。経理が過去のデータを管理するのに対し、財務は将来の財務計画と戦略に焦点を当てています。財務の主な業務には、予算管理、資金調達、資産運用などが含まれ、これらを通じて会社の事業展開を資金的に支えます。
財務担当者には企業経営に関する深い知識が求められ、会社の将来に大きな影響を及ぼす役割を果たしています。
税務業務を行うにあたり有用な資格とは
税務の経験や知識がないままでも、税務関連の仕事に転職することは可能ですが、税務業務に関連する資格を持っていると、転職が有利に進むことがあります。以下に、転職において有用な3つの資格を紹介します。
日商簿記
税務業務を遂行するためには、基本的な会計知識が不可欠です。法人税の場合、財務諸表をベースに税務との違いを調整して税金を計算する必要があるため、財務諸表に関する理解が欠かせません。
税理士試験においても、簿記と財務諸表論の科目が含まれており、これらの知識が重要です。会計に関連する資格として、手軽でおすすめなものは「日商簿記」です。日商簿記には3級、2級、1級と難易度が異なる試験がありますが、2級を取得しておくことをおすすめします。
中小企業診断士
会計事務所での税務業務では、中小企業の経営者とやり取りをすることが一般的です。そのため、経営に関する基本的な知識があれば役立ちます。中小企業診断士の資格は取得が難しいですが、仮に合格しなくても勉強したことは無駄にはならないでしょう。
公認会計士・税理士
税務業務を行うためには、公認会計士と税理士の資格が最も適しています。公認会計士試験に合格することで、後に税理士として登録することができます。多くの人が、公認会計士試験に合格後、まず監査法人で働き、その後に税理士法人に転職して税理士登録を取得しています。これらの資格を持つことで、税務業務だけでなく、幅広い業務に携わることができるようになります。
税務業務以外に税理士が行う仕事
税理士の仕事は、「税務代理や税務書類の作成、税務相談」といった専門的な業務だけでなく、他の分野でも活躍の場が広がっています。税理士が取り組むことができる税務業務以外の仕事は以下の通りです。
記帳代行
税理士は、単に税務書類を作成するだけでなく、クライアント企業の経理や財務に関連する記帳業務全般を代行します。会計帳簿の記帳代行、財務書類の作成、給与計算などが含まれます。記帳代行は税理士事務所の典型業務です。
なお昨今の税理士事務所においては、業務マネジメントITツールによって、生産性の向上が図られているというケースも少なくありません。これからの税務の現場では、業務効率の向上に特化したITツールはもはや不可欠であると言えます。
コンサルティング
税理士は、専門的な税務知識を活かして、コンサルティングやアドバイザリー業務に積極的に取り組んでいます。具体的には、経営全般に関する助言、M&Aなどのアドバイザリー業務、資金調達に関するコンサルティング、金融機関との交渉などがあります。
会計参与
税理士は会計参与として、会社の取締役などと協力して会社の財務文書の作成、保管、開示などを行います。会計参与は、株式会社の役員の一つです。
特に中小規模の株式会社では、財務文書の正確性を保証し、信頼性を高めるために設けられます。会社法に基づいて、会計参与には公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人などが指定されています
補佐人
税理士は、税務訴訟において「補佐人」として重要な役割を果たします。税務訴訟では、納税者の正当な権利と利益を守る必要があります。しかし、法律に精通した弁護士や税務に詳しい納税者自身だけでは、充分な主張が難しいことがあります。
そこで、弁護士とともに税理士が補佐人として協力し、裁判所での陳述や主張を強化します。これにより、納税者の権利と利益をより効果的に守ることができるのです。
行政・司法の支援
税理士の専門知識は、行政や司法のさまざまな分野で需要があります。たとえば、以下のものがあります。
- 国税審判官(国税不服審判所)
- 監査委員(地方公共団体)
- 民事・家事調停員(家庭裁判所)
- 法テラス(日本司法支援センター)
- 成年後見支援センター(地域の税理士会によるサポート)
- 登録政治資金監査人(政治資金の監査) など
未経験者でも税務業務に就ける?
税理士や公認会計士など、税務に関連した職業には専門知識が必要です。そのため、経験がないと税務の仕事に就けないと感じる人がいるかもしれません。しかし、実際には税理士事務所や会計事務所で、未経験者を募集している場合もあります。
この章では未経験者が税務関連の仕事に就く方法について説明します。
税理士補助なら可能な場合も
税理士補助の仕事では、付随業務としてクライアントから提出された領収書の確認や会計ソフトの操作、書類のファイリングなどを行います。税理士や公認会計士として働くには資格や実務経験が必要ですが、税理士補助のポジションでは未経験者でも採用されることがあります。
税理士や公認会計士など、税務関連の業界は現在人材不足が深刻であり、規模の大きな税理士事務所では多くの求人が出ています。このため、税理士資格を持たない未経験者でもチャンスが広がっています。
税理士補助としての経験を積むことで、将来的に税理士を目指す際に非常に有利になります。税理士補助の仕事はアルバイトやパートとしても募集されており、学業との両立がしやすいため、学生にも適しています。
また税理士補助なら未経験でも採用される場合があります。関連する資格を持っていると有利です。
関連資格を持つと有利
未経験者でも税務関連の仕事に就くことは可能ですが、関連資格を持っていると採用される可能性が高まります。たとえば、日商簿記2級の資格を持つことで、基本的な会計処理に関する知識があると認識されやすくなります。
また、将来的に税理士を目指す場合、税理士試験の科目合格を目指すことも一つの方法です。全科目でなくても、1つ以上の科目を合格していることは、税理士資格を取得する意欲があることを示す重要な要素となります。
特に「簿記」と「財務諸表論」の2つの科目は必須であり、業務に直結するため、合格することで就職時に高く評価されることがあります。
まとめ
この記事では税務業務について説明してきました。
税理士の仕事の範囲は単なる税務専門業務に留まらず、広範な分野にわたります。税法関連だけでなく、クライアントとコミュニケーションをとりながら、経営のアドバイスや提案を行うコンサルティング業務も非常に重要です。
そして、コンサルティング業務などの付加価値業務に注力するためにも、業務プロセスを効率的に統合管理でき、組織としての生産性が大幅に向上するようなITツールの導入は必須であると言えます。
社内の業務だけでなく、オフィスとクライアントの連携もスムーズになって顧客サービスの満足度向上に寄与するようなITツールであればなお良いといえるでしょう。
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